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■ ゼルダの伝説 その4

《コントローラーベタベタ事件》

僕は、その親の言葉を聞いて、「なんとなく大変そうだなぁ」と思ったが、
それ以上は特段何も思わなかった。子どもなんて、そんなものである。

ただし、その日、E君の家で起こった出来事は違った。
僕らも積極的に、家庭環境というものについて、考えざるを得なくなったのである。

それは、E君の一言から始まった。
「貧乏は触るんじゃねぇよ。うつっちゃうだろ」
E君はA君に向かってそう言ったのだ。

ことの発端は単純なものだった。
A君が、お菓子に出されたポテトチップを掴んだ手で、
コントローラーを握ったため、コントローラーがべたべたしてしまったのだ。
それに腹を立てた、E君がそう言ったのだった。

「貧乏は、お菓子ばっかガツガツ食べるから嫌なんだよ。
 べたべたした手で触るんじゃねえよ、汚ねえだろうが!!!」


E君は続けてそう言った。僕はE君の方を見た。
E君はすっかり落ち込んでいて、お菓子を食べるのをやめて、うつむいていた。
泣いているようにも見えた。


A君が本当にお菓子をガツガツ食べていたのかどうかは分からない。

でも、何となくだが、食べ物のことでああいう風に言われるのは、精神的にきついだろうな、と思った。

僕は、
「E君、やめろって。そんなこと言うの」と言ったが、
「だって、こいつのせいで、べたべたするんだもん」とE君は言った。

そして、もう一度、A君の顔を見ながら
「貧乏のせいでべたべただよ」と吐き捨てた。

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