《大人たち》
その後、E君の母親が来て、I君に、
「どうして、たたいたりしたの?」
と聞いたが、I君は何も言わなかった。
僕も同じようなことを聞かれたが、何も言わなかった。
帰り道で、I君は僕と一緒に入部しているサッカー少年団の話をした。
今日の出来事には、あえて触れないようにしているようだった。
家に帰ると、E君の母親から連絡が入っていたようで、
「どうしてI君はE君をたたいたの?」と母親から聞かれた。
I君は僕が思っていた以上に、強烈に殴ったらしく、
E君の歯がぐらぐらしているとか、何とか言っていた。
僕は、「しょうがなかったんだよ」とだけ答えた。
父親が帰ってくると、母親は父親に僕を問いつめるように言った。
今考えると、大人たちは大人たちでいろいろあったんだろうなと思う。
僕は父親が怖かったので、しょうがなく、事のいきさつを説明した。
父親は、ちょっと息をついて、
「まぁ、そんなこともあるよな」
と言っただけで、それ以上は何も言わなかった。
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