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■ 消えた冒険の書 その3


《絞りこみ・・・》


僕は、学校での日頃の行いや、Y君の「冒険の書」が賞賛を浴びていた時期の、
容疑者(あえて容疑者と言うが)たちの表情を思い浮かべていった。

その結果、僕は容疑者を3人に絞り込むことが出来た。
物的証拠はなかったが、僕にはこの3人の中に犯人がいるということを、
かなり強い思いで確信していた。

恐らく、学校の担任の先生では、この絞り込みは出来なかっただろうと思う。

子どもの方が、子どものことは分かっているのだから。

僕は、この犯人を3人に絞ったことについて、友人I君に相談しようかどうか迷った。
でも、結局やめておいた。

I君はもうその話題には触れたくなさそうだったし、何一つ証拠はないのだから。
それで、自分一人で分析を続けることにした。

少しの時間が経過して、クラスの中では、「犯人捜し」は終わろうとしていたが、

「盗んだ奴、許せねぇよな!」

という全体の意志みたいなものが、できつつあった。
Y君が依然として、しょんぼりしているのも、それを加速させたような気がする。

一方、僕は容疑者3人の状態から、更なる絞り込みを出来ずにいた。

誰が犯人でも、おかしくないような気がしたきたし、そのうちの誰も犯人でないような気がしてきた。
捜査は行き詰まりへと向かおうとしていた。

その日の放課後、誰からともなく、また、「Y君の消えたドラクエ3」の話になった。
その時クラスメートが7,8人くらいいたと思う。

色々、好き勝手みんなで話し合ったあげく、D君が、怖い顔をして、

「俺、絶対犯人許さねえからな。見つけたら何回もぶん殴ってやる!」

と言って、大袈裟に指をポキポキとならした。
そのD君の気合いは、犯人でない僕でさえ、震えそうなものがあった。

それは、Y君の借りを返すというより、ただ、

「誰かを殴りたい」

という衝動の方が強いようだった。D君、ちょっと粗暴な感じの子だったから。

そして、第二の事件が起こった・・・

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