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■ 僕がファミコンをゲットするまで・・・ その2


《精一杯の駆け引き・・・》


第2章 勇気
(大事なのは結果じゃない。君が勇気をふりしぼれるかどうか、それが問題なんだ)


その日の夜の食卓、父親は機嫌がよさそうだった。好きなビールを2杯ほど飲んでいたと思う。
食事が終わって椅子にどっしりと体重をあずけて、たばこをふかしているその姿は、
地獄の番人「えんま様」を思わせるものがあった。

僕は好きなカレーも満足に喉を通らずに、極度の緊張に体をこわばらせながら、
ファミコンの話をいつ切り出そうか迷っていた。

その時、テレビの中で巨人の誰かがホームランを打った。
「おっしゃー」
と感極まって立ち上がる大の巨人ファンの父親。心のバランスは、完全にへと傾いている。

今だ、今しかない。このチャンスを逃したら、僕は一生マリオに会えない・・・

僕はちっぽけな勇気を振り絞り、とうとう荒れ狂う真冬の日本海へと足を踏み入れた。
あろうことか水着もつけずに
全裸でだ!

「ねぇ、お父さん」
「なに?(視線はテレビのまま)」
「クラスのみんなも持ってるんだけど(軽いうそ)、ファミコン買ってよ」

「・・・・・(沈黙)」


限りなく重い沈黙。僕は、もうすぐ二十代を終えようという年頃だが、
この時ほど重い沈黙というものに、未だ出会えていない。

「だめだ」

相変わらずテレビから目をそむけずに、彼はそう言った。でも、僕は退けなかった。
今日退いたら、今後この話題を振ることさえできなくなる。
しつこいのが大嫌いな人なのだ。そして、この人はそういう人間に容赦はしない。

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