《精一杯の駆け引き・・・》
第2章 勇気
(大事なのは結果じゃない。君が勇気をふりしぼれるかどうか、それが問題なんだ)
その日の夜の食卓、父親は機嫌がよさそうだった。好きなビールを2杯ほど飲んでいたと思う。
食事が終わって椅子にどっしりと体重をあずけて、たばこをふかしているその姿は、
地獄の番人「えんま様」を思わせるものがあった。
僕は好きなカレーも満足に喉を通らずに、極度の緊張に体をこわばらせながら、
ファミコンの話をいつ切り出そうか迷っていた。
その時、テレビの中で巨人の誰かがホームランを打った。
「おっしゃー」
と感極まって立ち上がる大の巨人ファンの父親。心のバランスは、完全に悦へと傾いている。
今だ、今しかない。このチャンスを逃したら、僕は一生マリオに会えない・・・
僕はちっぽけな勇気を振り絞り、とうとう荒れ狂う真冬の日本海へと足を踏み入れた。
あろうことか水着もつけずに全裸でだ!
「ねぇ、お父さん」
「なに?(視線はテレビのまま)」
「クラスのみんなも持ってるんだけど(軽いうそ)、ファミコン買ってよ」
「・・・・・(沈黙)」
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